vol.6 マンション-インテリアオプション販売会で思うこと--- その2 
ウッドとタイル、どっちがいいの?(前編)
マンションのインテリアオプション販売会では、
タイル系ベランダパネルと隣あわせになるのが常です。

表面上は和やかに談笑しつつ、腹の中ではお互いに邪魔くさいと思いながら
並んでいるのですが、お互いのPRポイントは、実に対照的です。

即ち自分のところの商品をPRすれば、一方をけなすことになってしまうから大変。
ひとのいいくり坊は、ついつい遠慮がちになってしまう。

タイル系メーカーの訴求ポイントの第一は、「メンテナンスフリー」
「マンションの外壁に使用しているタイルと同じ素材ですから、メンテナンスしなくても
変色もまったくありません。汚れたらデッキブラシでゴシゴシやってもらえばOKです・・・」
タイル担当者は自信に満ちた表情で語りはじめる。

うーん、痛いところ攻めてくるなあ、などど思いながら、くり坊はにこやかに聞いている。

年のころなら30代前半。幼稚園にあがる前くらいの男の子を連れたご夫婦は、
うんうんと頷いている。どうやら気持ちがタイルに傾きかけているようだ。

まずい・・・。店長くり坊はこころの中で焦り始める。
どうやら、ウッドとタイルの担当が別であることに気づいていないらしい。

「いいわねえ・・・」奥様がそうつぶやくと、ミスタータイルは、
おもむろに伝票を手に取りすぐにでもボールペンを走らせそうな勢いを見せた。

やばい・・・。店長くり坊が「ちょっとすいません」
と二人の中に割って入ろうとした瞬間、ご主人が口を開いた。

店長くり坊は一気に自信を取り戻し、起死回生の一言を発した。

「ウッドの担当は私です」
思わず一歩前へ。

その勢いに押されてか、ミスタータイルは一歩後ずさりする。

「やはり、ウッドの特徴は、自然の素材で温かみがあることです。
真夏でも極端に暑くなることもありませんし、逆に冬でも素足で出られないほど
冷たくもなりません。たとえば小さなお子様が座り込んで遊んでも大丈夫。」

若夫婦はうんうんと頷きながら聞いている。

「マンションの場合は、どうしても外に出るのが億劫になって、
どうしても外気に触れる機会も減り勝ちですが、ベランダは最も身近な外なんです。」

「普通、ご主人はあまりベランダに出られることがないんですが、
デッキを張るとなぜだか出たくなるんです。
やっぱり、外と内との精神的な距離感が大きく変わってくるみたいですね。」

「休みの日などは、ちょっと外でお茶でも、なんて気分になるわけです。」

「子供さんがベランダに出る機会も増えますし、ご主人も外で一服。
デッキひとつで生活に広がりが生まれてきます。」

「こちらのマンションは、特にリビングの窓が大きくとってありますので、
ベランダにウッドを張ることによってリビングとの一体感が生まれ、広がりが出てきます。」

「ベランダデッキ自体は、確かに贅沢品ですし、決して安くはありませんが、
ベランダをうまく使うことで、生活空間も画期的に広がり、ライフスタイルも大きく変わってきます。」

店長くり坊は、すっかり勢いを取り戻し、思いつくままのセールストークを炸裂させる。

「やっぱり、素足で感じられる木のぬくもりがいいです。」

得意満面といった表情の店長くり坊に、ご主人が問い掛けた。

「なかなかうまいことをいうねえ。ところで、メンテナンスはどうなの?」

店長くり坊は、その小さな目の端で、一歩前に出かかったミスタータイルの動きを捉えた。

ウッドとタイルの熾烈な仁義なき戦いは、いよいよクライマックスに向けて後半へつづく。
店長くり坊の運命やいかに。ちゃんちゃん。