vol.10 「ウッドザビエル的文明論 01」--- 21世紀は森の文明である。
前回、木樹脂(もくじゅし)についてのたまってみたわけですが、
どちらを使うかはユーザーの方にお任せするとして話を次に進めましょう。

言っておきますが、木樹脂が悪いと言っているのではありませんよ。
ただ、木樹脂のデッキは、ウッドデッキなの?と思うわけ。
ひょっとして、「樹脂」の樹をとってウッドデッキ?ちょっと苦しくないですか?

そもそも、なんでプラスチックのことを「樹脂」と呼ぶのか!紛らわしい。
そもそも樹脂とは、呼んで字のごとく樹の脂。ヤニ、漆など天然の植物が分泌する成分で
古くから塗料・絵の具・接着剤・薬品などに利用されてきたものです。

そこで、石炭・石油などの副産物を利用して化学的に合成して作った樹脂に似た性質のものが「合成樹脂」。
そもそも、始まりからして贋物だったわけ。

難しい化学の話はともかく、もともと、天然樹脂に似た性質のものを合成して作ろうとした結果、
新しい特徴が発見され、新しい用途を生み、さらに研究がすすみ、
加速度的に拡大した樹脂の利用範囲はまさしく想像を絶するほど広がりました。

接着剤・塗料のようなものをはじめ、樹脂を成型したプラスチックなどなど。
身の回りを見渡しても、電化製品、照明、家具、などほとんどプラスチック。

合成樹脂なしでは、現在の私たちの生活は語れないのです。
合成樹脂は、20世紀と高度成長を象徴する発明といってもいいでしょう。

私たちの豊かさは合成樹脂に支えられているといっても過言ではありません。
そのすばらしい性質とコストパフォーマンスに私たちは感謝しなければなりません。

私自身、木の伝道師・ウッドザビエルあらため、
樹脂の伝道師・プラザビエルに改名しようかと思うくらいです。
しかし、プラザビエルでは、あまりに軽い。
では樹脂ザビエル、いやカタカナでジュシザビエル・・・。
どうもしっくりこないので、やっぱりウッドザビエルにしておきましょう。

さて、そのくらいすばらしい合成樹脂ですから、
「樹脂」といえば「合成樹脂」になったのも仕方がない。
軒を貸して母屋を取られるという感もありますが、百歩譲って認めましょう。
(心の広いところを見せながら・・・)

すばらしい木と、すばらしい「樹脂」の性質を併せ持つ「木樹脂」。
ダブルすばらしいで、言うことなし。
と言いたいところですがちょっと待った。

確かに、プラスチックに代表される合成樹脂は20世紀を象徴していますが、
21世紀的には大変困った代物になってしまいました。

そう、合成樹脂の最大の欠点は大自然の営みを完全に無視していることにあります。

燃やせば有毒ガスが出る。地中に埋めても土に還らない・・・。
温暖化・ゴミ問題・オゾン層の破壊・砂漠化などの自然破壊は、
石油文明が残した地球に対する大きな負債です。

大きな利便性を手にした反面、犠牲にしたものも非常に大きかったはずです。

21世紀は、20世紀の負債を返済する世紀であるといってもいいでしょう。
もう一度自然の営みに敬意を表し、謙虚な気持ちで暮らしを見つめて見る必要があります。

木のすばらしさは、木目の美しさや性質だけでなく、
大自然の営みの主役であるということにもあります。

木が森を作り、動物を育て、水を蓄え、海を育てる。
そしてその恩恵を木材資源という形で私たちが利用しています。

木材は、再生可能な資源であるばかりでなく、その成長過程で多くの二酸化炭素を吸収し、
さらに落ち葉は腐葉土を生み、水を作る、となるとこれ以上に21世紀的な素材があるでしょうか?

かつて、東南アジアで原生林を伐採しガンガン日本に輸入した時代がありました。
現地の山は丸裸になりジャングルは荒れ果て、動物たちは逃げ惑う・・・(見てきたわけではありません)
「日本人は木の箸を使うから自然破壊だ」などと言われた時代です。

ただ、問題だったのは、木を切ることしか考えていなかったからなのです。
使い捨て文明の一環として木を切ったわけ。
その時点で考え方が「石油文明的」「20世紀的」なのです。


21世紀は「こころの世紀」です。

大自然と謙虚な気持ちで共存する「こころ」が大事です。

木を切るということは、木を植えるということです。

木を植えるということは、木を育てるということです。

木を育てるということは森を作るということです。

森が地面を守ります。動物を守ります。そして地球を守るのです。

そして、森が大きく育ってきたら、その一次的な恩恵は木材資源として受け取ることができます。

そして、また木を植えます。

だから、木が大切なのです。


価値観はみんな違って当たり前。

収入の多寡、地位の高低なんかで人間を判断する人は「20世紀的・石油文明的」な人。
肩書きには最敬礼するけれども、その人の生き方には興味が持てない。

逆に、21世紀的な人は、肩書きよりもその人の生き方に敬意を表する。

私は、当然21世紀的な人と付き合っていきたいと思います。

私は、21世紀は「森の文明」だと思います。

そのこころは「調和」です。

何かの犠牲の上に、何かの繁栄があるのではなく、ともに栄えなければ意味がない。

そう、「宇宙船地球号」なのです。運命共同体。

そう考えると、再生可能な唯一の天然資源である「木」の存在は重要です。


さてさて、硬い話が続きましたが、今さらパソコンのキャビネットを木製にしろ、
などと言っているのではありません。
そんなものが出ても買いません。
やっぱり、プラスチックのキャビネットのものがいいですよね。
でも木製マウスは手触りがよさそうかも。

さて、植物性プラスチックなるものが最近話題です。
とうもろこしなどの澱粉を原料に作るらしいのですが、もとが植物成分なので、
捨てても土に返るらしい。どこまでの範囲が植物性ブラスチックに代替可能なのかは分かりませんが、
これも石油文明から森林文明への移行の一環と言えるかもしれません。

それでは、今回はこの辺で。


※一気に硬い話になってしまい、これからの展開がちょっと心配。
フジテレビがNHKスペシャルを作っちゃったみないな・・・。
まあ、ウッドザビエル的文明論ということで、お許しを。