vol.14  日曜大工に思う。 --- その1
日曜大工センターって言葉知ってます?

今ではホームセンターに吸収合併された感じですが、
もともとは「日曜大工センター」が始まりです。

ここからはかなりの部分、私の独断的な推測を
もとにしたものですのでそのつもりで。

1970年代。高度成長期の真っ只中。
戦後がむしゃらに働いてきた日本人ですが、
多少余裕もでき始めたころ。

日本人が欧米人からエコノミックアニマルと揶揄されていた時代です。

エコノミックアニマルとは、お金のことしか考えていない
文化レベルの低い野蛮人といった意味でしょう。

貧しい時代を生きてきたわけですから、
それはそれで仕方ないことでした。

自分のため、家族のため、会社のため、
日本のために必死に生きていた時代。

まさしく、「プロジェクトX」の時代です。

この時代の主役は今の65歳以上の方々。

年金をたくさん貰うだけの価値が十分ある働きです。

気付けば多少の余裕が生まれていた時代。

それが1970年代です。


少し落ち着いて周囲の様子が見えるようになった時代。

ビートルズ。フォークソング。ロックンロール。

テレビの普及。洗濯機、掃除機、冷蔵庫などの電化製品の充実。

なんとなく外見だけは「欧米」に近づいてきた時代。

そんなとき、日本人はアメリカに視察に行き、
ホームセンターというものに衝撃を受けたわけでしょう。

そこには、木材・大工道具は当然のことながら
便器やドア、窓、床板、水道用品、配線用品、石、レンガ・・・・。

家に関するものなら何でも揃っていたわけ。

開拓者精神あふれるアメリカ人は、
自分でできることは自分でするのが当たり前。

ガレージの中には車の他に電動道具や芝刈り機がある。

子どもも小遣い稼ぎにペンキ塗り!

ががーん!

きっと日本もこうなるぞ!

というわけで日本にできたのが「日曜大工センター」。

参入したのは、材木屋・金物屋などの建設資材小売業者。

「職人だけが買いにくる閉鎖的な店ではなく、
誰でも気軽には入れるオープンな建築資材の店を!」

「DIY」という洒落た言葉も輸入して、「日本に革命をおこすぞ!」という勢い。

が、しかし、日曜大工商品は売れませんでした。

戦後、がむしゃらに生きた20年は日本人の心に大きな変化をもたらしていたのです。

金で解決できるものは金で解決する。

金さえあれば解決できる。

修理するより買い換えたほうが楽。

そう、日本人の美徳であったはずの「清貧」の思想や、
身の回りのすべてのものに感謝し、大事にしようとする気持ちが失われていたのです。

いわゆる「使い捨て文明」です。


話は変わりますが、先週ビデオを借りて、
遅ればせながら「ラストサムライ」を見ました。

ラストシーンで明治天皇いわく。

「日本人の心を忘れてはならない」

日本にはいい言葉がありますね。

「足るを知る」

我慢しろってことじゃないんです。感謝しろってこと。


さて、DIYでした。

そんなわけで、日曜大工商品は販売不振。

日曜大工センターは大きな選択を迫られます。

「閉店」か、「方向転換」か。

そして多くの「日曜大工センター」は、日用品に力を入れて
「ホームセンター」となっていったわけです。

ホームセンターが生き残るためにしてきた最大の戦略が「安売り」。

もうこうなると、一般消費者にはホームセンターと、
ディスカウントショップとスーパーマーケットの区別もつきにくくなってきます。

このあたりが80年代でしょうか。

とにかく、なりふりかまわぬ生き残り戦略です。


が、ホームセンターはその便利さも手伝って拡大基調に入ります。

ただし、その牽引力は「日曜大工」ではありませんでした。
(とわたしは思います)

生活関連商品の総合店舗という「何でも屋」の便利さと、
安さが受けたのでしょう。

まさしく、「使い捨て文明」を背景に成長したといえるかもしれません。

現在の40代から下の世代(もちろん私も入ります)は、まさしく「使い捨て世代」。

バブリーな時代に突入し、自分で何か作る暇があったら金をもうけたほうがいい!

というわけで、日本人が駆け抜けた後にはごみの山が・・・。


そしてバブルの崩壊。

残業もなくなった。

収入も減った。

家族との時間が増えたが家族は冷たかった。

まさに、突然頭から冷や水を浴びせられた状態。

さて、これからどうするんだ!


焼け跡から立ち上がりエコノミックアニマルと呼ばれた
モーレツ戦中世代(70歳以上)

競争社会を生き抜き、出世こそが人生の目的だった
団塊の世代(50歳以上) 気付けば豊かになっていた
他力本願使い捨て世代(40歳以上)

バブル時代に青春をすごした
わがまま使い捨て世代(30歳以上)

人生に夢を持つより、今日を楽しく生きたい
コンビニ使い捨て世代(20歳以上)


さてさて、いったいこの日曜大工の話はどっちの方向に向かっていくのか!

日本の将来と同じくらい危なっかしい状態ではありますが、
ひとまず、つづく。