vol.15  日曜大工に思う。 --- その2
いやー、前回一体何を書いたか
私自身が忘れるくらいの期間が経過してしまったようで、
「気まぐれメルマガ」とはいえあまりにひどい。
今回「ひとりごと」をのたまうにあたり、
バックナンバーを読み返した始末。
私の整理も兼ねまして前号の要点をまとめてみますと


●日本人の「ものつくり」の心を喚起させるはずだった
日曜大工センターは、結局根付かず、高度成長からバブルへと
休みなく突っ走り、とても「DIY」などしている場合ではなかった。

●日曜大工センターは日本人のニーズに対応して、
安売り・大量消費を支える「ホームセンター」に姿を変えて生き残った。

そしてバブル崩壊
残業もなくなった。
収入も減った。
家族との時間が増えたが家族は冷たかった。

というところで前回は終わった次第。
同じ話を繰り返すところが昨今のテレビにも通じるものがありますが・・・。


さて、バブル崩壊から10年余り。
時代は大きく変わりました。

かつて「いつかはクラウン」という傑作CMがありました。
そのCMが国民全体を魅了した時代は

・金持ちはえらい
・いい車に乗っているからえらい
・大きな会社に勤めているからえらい
・いい大学を出ているからえらい

というような唯物的相対的価値の時代です。
上と下がはっきりしている。
隣と比べながら自分の位置を確認できた時代でもあります。

でも今は違います。
上に上がってもあまりいいことがない、ということに若者が気付き始めました。
また、中高年のお父さん方も気付いたのです。
自分と家庭を犠牲にして働いた割には、
会社も社会も思いのほか冷たいということに・・・。

バブル崩壊は、「いつかはクラウン」という
目標のはっきりした時代の終焉をも意味していました。
方向感覚を失った時代の新しいキーワード。
それが「自分らしさ」だったのです。

自分らしさ・・・。
いい言葉ですね。
でも、これまでそんなこと考えたことがなかったわけですから大変です。
相対的価値観から絶対的価値観への移行とも言えます。

大会社のエリートサラリーマンと、「役者志望貧乏さん」
いったいどちらが「幸せ」なのか?
これって、難しい問題です。
自分ならエリートサラリーマンのほうが幸せだ、ということは言えても、
その人自身がどう思っているかということは分かりません。
自分らしさの基準は、一人一人の内部にあるものなので、
他人が口出しする問題ではないのです。
「俺はこうなんだ!」と言い切ればそれが絶対的価値観でしょう。

私にも二人の息子はおりますがテストの点を聞いた後、必ず
「平均は?」
これもまた相対的発想ですね。

バブル崩壊のあとに残ったもの。
時間と不安。
家族旅行に行きたい。
でもお金がない。
そこでまず脚光を浴びたのが「アウトドア」
休日には家族と愛犬を連れて自然あふれる山のキャンプ場へ。
そのためにはセダンタイプの車では荷物が積めない。
それが「RV車」の爆発的ヒットにつながりました。
最初のアウトドア派は個性豊かであったかもしれませんが、
結局それが風潮になり、日本人の「相対的価値観依存症」が
アウトドアブームを呼んだわけです。
「RV車」=いいお父さん=幸せな家庭
という方程式がなんとなく世の中の常識になってしまいました。

しかし何年かすると分かってきます。
虫が出たくらいで大騒ぎするようでは真のアウトドア派とは言えません

。 キャンプに行くのも子どもが小さな間だけ。
しかも年1回。
そのうち子どもも付いてこなくなり、車だけが大きく感じられる。
「RV車」=洗車・ワックスが大変=駐車場にも困る
という新たな方程式が登場。
ゴルフに行くほど小遣いがもらえず、
かといってゴロゴロしてれば「粗大ごみ」
奥様はガーデニングなるものに情熱を燃やしている。
どうやら奥様は「自分らしさ」の表現をガーデニングに発見したらしい。

一人暇そうなお父さんは家族の冷たい視線を感じつつ大逆転に打ってでた!

「今度の連休にはウッドデッキを作るぞ!」

DIYの記憶といえば中学時代の「技術」の時間に、
木製の椅子を作ったことまでさかのぼる。
その椅子は現在実家の軒下で朽ち果てようとしている。

ウッドデッキを作ると宣言はしたものの、
どうやって作ったらいいのかさっぱり分からない。
とりあえず「今度の連休」宣言は不発。
「やっぱり言うだけね」
妻子の評価はさらにダウン。
一発逆転のはずが、盗塁タッチアウト。
思わず駆け出したものの、思ったより足が付いてきませんでした。
さーこれで、ツーアウト。
お父さん背水の陣です。

インターネットで調べ、
本屋に行き「ドゥーパ」を立ち読みし、
近所のデッキを散歩がてらに眺め、
時にはさりげなく靴の紐を結ぶふりをしてしゃがみこみ、床下の構造をチェック。
ホームセンターに行っても見るコーナーが変わってきた。
「そうか、やっぱりウッドデッキにはインパクトドライバーか・・・」
などと呟きつつ、工具を見て歩くと意外に楽しい。
気分はすでにDIYヤーだ。
(でもまだ何も作ったことがない)

さて、このお父さんのウッドデッキ製作奮闘記がどうなるかはともかく・・・・

父親らしさって何でしょう?
今の家庭の中には「父親らしさ」を発揮する場面があまりない。
・息が酒臭い。
・タバコ臭い。
・休日は昼まで寝ている。
・テレビを見ながら「これ誰?」と若いタレントの名前を聞く。
・テレビを見ながら「おなら」をする。
・テレビを見ながら「うがー」といびきをかいて寝る。
・パンツのまま部屋をうろつく。
・腹が出ている。

どうもいい印象がないようだ。

お父さんの株を上げるにはやっぱり「DIY」
これで、夕方には気持ちよく、そして家族のねぎらいを受けながらうまいビールは飲めるというものです。

このウッドザビエル、全国の憂えるお父さんのお力にならせていただきます。

それでは、全国の迷えるお父さんに

乾杯。