vol.21  ものの値段・・・本来の価値と体脂肪
ものには値段があります。
当たり前のようですが、不思議なことでもあります。
売りたいという人がいて、欲しいという人がいて、それぞれに希望があって、
それが折り合ったところが「値段」になるわけで、
それが市場原理の基本なのでしょう。

ただ、実際には一対一の関係であることよりも、
複数が入り乱れているほうが普通です。
その中で自由競争が行われ、「合理的」な価格が決まっていきます。

情報が行き渡らない状態では、部分的に「ぼろ儲け」が
存在できるのですが、長続きはしません。

いいものが安ければ自動販売機でも売れる。
普通のものを高く売るのが営業マンの仕事だ。

これもある意味、真理です。
お前ら営業マンに経費がかかってるんだから、その分高く売れ!というわけです。
そして、実際の価格には「本来の価値」以上のコストが乗せられることになります。

実は、商品の価格には「本来の価値」とは別のコストがいっぱいくっついています。

分かりやすく、私が長い間お世話になった住宅業界における、
「建材」の価格を例にとってみます。
最も一般的な商流(売買の流れ)は
メーカー → 商社 → 問屋 → 建材屋 → 工務店 → 施主
の6者が存在します。
それぞれ、役割に応じて「マージン」を取るので、
メーカー価格と施主価格の間には恐ろしい開きが出てきます。
一坪1万円の床材があるとすれば、施主が意識しなくても
何千円かの費用を中間業者に支払っていることになります。
それぞれの「役割に応じて」、といいましたが、
確かにその役割が納得できるものであれば価格は「適正」です。

それでは、もともと想定されていた「役割」を考えて見ます。

メーカー・・・材料を生産します。

商社・・・情報こそが商社の命です。
売りたい人(メーカー)と買いたい人の情報を持ち、その橋渡しを行います。
橋渡しをしてしまえば、あとはメーカーと問屋の間を
物が動くたびに「マージン」が入ります。
また、メーカーにとっては「回収」の不安をなくす効果もあります。

問屋・・・そのエリアの物流の拠点であることが一般的です。
大量の在庫を持ち、地域の「販売店」にタイムリーに商品を
提供します。
そのため、数多くの有力メーカーと取引があることが重要になります。

建材店・・・複雑で多数の商品を「タイムリー」に現場に届けるという
役割を担っています。建材店があることによって、工務店は施工に注力できます。

工務店・・・「施工」という不可欠な部分を担っています。
施工費はもちろんかかりますが、
一般に、材料費にもマージンを乗せて販売しています。
工務店の利益は、「施工の利益+材料の利益」ということになります。

なんだかややこしい話ですが、よく考えてみるとエンドユーザーに
直接メリットのある「役割」というのはほとんどないことが分かります。
この中で、究極的に不可欠なのは、「メーカー」と工務店だけです。
なので、商社から販売店までを総称して「流通業」と呼びます。
流れる、通るということで、「ホース」みたいな役割ですね。
蛇口から直接水を受ければ不要です。
もし、蛇口のそばで水を受けるのに、長いホースを使っているとしたら、
これはやっぱり無駄なので、ホースをカットしたくなりますね。
「役割」がないにも関わらず、慣習的についているのですから、
人間で言えば「脂肪」と同じです。
最初は筋肉だったのに、使わないからいつの間にか脂肪に変わっていた、
という状況です。
脂肪にも当然役割がありますが、必要以上に付けば「生活習慣病」に
なってしまうので、ダイエットが必要になります。

「小売業の大型化」は「問屋」の役割を奪い、
インターネットの普及は「小売業」の役割も小さくしました。

儲からないなあ、なにかいいことないかなあ・・・・。
そして誰もが思いつくのが「ネット販売」です。

これまで、商社や問屋の営業力に頼ってきたメーカーが
「インターネット」を使って直接ユーザーに物を売る。
これまで流通業者が取っていたマージンが自分の懐に入るという
夢のような販売方法です。
多くのメーカーそれを夢見て、チャレンジしましたが、結果は惨敗。
エンドユーザーはそんなに甘くはないのです。

昔ながらの固定式蛇口ではなかなか売れません。
今の蛇口は、首を振るのは当たり前で、
さらにホースが伸びてシャンプーができたり、
あるいは「活水器」がついていたり・・・・。

「いままで、こういう細やかな対応をしていたのが流通業だったのだ」
と気付くわけです。
エンドユーザーは価値を感じていないかもしれませんが、
懇切丁寧で細やかな対応にもちゃんとコストがかかっているのです。
メーカーはこれまで、電話1本で100個、1000個の注文をもらえました。
でもエンドユーザーからは1個の注文がきて、
その都度商品の説明を求められたりします。
結果として、窓口の人間を増やします。
確かに粗利は多少増えるのですが、
人件費の増加や煩雑さを考えるとぜんぜん儲からない。
「やーめた」
大半のメーカー直売ネット販売はこうして終焉を迎えます。

商品価格のダイエットも簡単ではありません。

そんな中、「WOODPRO」の目指すもの。
次回メルマガに続く。